魔女に記憶を奪われる不思議な孤島の物語。謎に満ちたストーリーと幻想的なグラフィク、静かに語りかける王道のアドベンチャー「マジョのシマ」レビュー

 正直派手さはありません。とても静かなゲームですが、謎に満ちた設定に少しずつ解明されていく秘密、精細かつまるで立体の様に動くドットで描かれた美しいグラフィック。

 奇をてらわず正面から物語とゲーム性を堪能できる本格的アドベンチャーゲームです。

マジョのシマ

価格:無料

カテゴリ:アドベンチャー

 ゲームの基本は探索。主人公である島の住人を操作して島の人々と話し、アイテムを集め、使い物語の謎を解いていくという王道のアドベンチャーゲームです。

 まず最初に驚かされるのがグラフィック。タイトルバックの島の全景からクローズアップされてそのままプレイ画面に入る様子はさながら映画の様であり、細部まで描かれたドットは美しいだけでなく、奥行きの表現まで見事で息を呑みます。

 ただ美しく壮大、というのではなくゲームの内容やストーリーとシンクロする様に”静かに美しい”というのが特徴。色使いも落ち着いており派手さは全くありませんが、それこそがこのゲームの良いところ。

 そしてストーリーが素晴らしい。突然魔女に呪いをかけられた主人公は呪いを解くべく、言われたとおりに盗まれた壺を探すために島の探索を始めます。期限は朝の4時まで。それを過ぎると呪いにより殺されてしまいます。

 魔女に支配された島には、外から来た人は記憶を失ってしまう、島の人によって魔女に対する意識が違うなど数々の秘密があります。人々と話し、謎を解いていくことでこれらのストーリーも明らかになっていきます。

 導入部こそゆっくりしていますが、話を細かに聞いていくうちに様々な疑問が浮かび上がり、見た目の相乗効果もありじわじわと世界に引き込まれていきます。

 ただ主人公を動かすだけでなく、会ったことのある住人は即座に一覧に登録され、そこからその人の動向を追うことができるといったちょっと特殊なシステムも。

 これにより、リアルタイムで動いている住人達が自分の視界外で何か特別なことをしていないか、どこか知らないところに行っていないかなど確認ができ謎を解く鍵になります。

 謎の難易度は程よく、簡単すぎず難しすぎずといったレベル。非常にわかりやすいチャートが最初から用意されていて、わからないポイントで動画広告を見るだけでヒントを提示してくれるので、詰まってもすぐ解決が可能です。

 マルチエンディングなので周回プレイでそれぞれの結末からストーリーを多角的に楽しむこともできます。

 とにかくゲームのストーリー、グラフィック、システムそして細かなSEまで全てが一つの作品としてそれぞれの良さを引き出しているのが素晴らしい。無駄はなく足りないものもない、という感じがします。ストーリー的にはもっと説明が欲しい方もいるかもしれませんが、それを補完できるだけの本筋はちゃんとあり、無駄に雄弁なものより余韻を楽しむことができると思います。

 細かい点で好みや人により惜しいと思う点はあると思いますが、アドベンチャーゲームとして理想的な形であり、物語を楽しむゲームとして素晴らしい出来だと胸を張っておすすめします 。

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