iPhoneアプリにおいてやはり一番人気のジャンルはゲームです。2008年7月10日、App Storeが始まって以来それは変わらぬ事実でした。
そこから5年超、ただ一律に成長してきたかというとそうではありません。人気・ブーム・経済状況・デベロッパーの隆盛…などなど、様々な事が複雑に絡み合いiPhoneゲームは変化を遂げて来ました。2013年も年末に差し掛かり、改めてここでその歴史を振り返りたいと思います。
App Store誕生時にこんな感じの事が言われました「個人でもアプリを作って収入が得られる。IT時代のゴールドラッシュ到来」と。そしてその言葉通り先陣を切った優秀な個人開発者達のライトゲームが飛ぶように売れます。
一方で企業として早くも名乗りを上げたメーカーもありました。主にゲームロフトやエレクトロニック・アーツなどスマホ化が早かった海外メーカーは個人では作れない様なハイクオリティなゲームを次々と投入します。
この二者の違いは主に値段。個人開発者は1アプリ105円(当時)や無料アプリをプロモートとして作り有料へ誘導といった手法を多く使いました。対して企業は600円や1000円など有料で比較的高額な設定で売上を延ばしました。
この時点で両者はユーザーのニーズ、企業の目的いずれも住み分けが出来ておりある意味幸せな時代だったと言えます。しかし時代は変わるのです…
iPhoneゲームを語る上で”それ以前”を無視する事は出来ません。いわゆるガラケー時代、携帯ゲームの覇者は主にモバゲーとGREEでした。もちろんそれはスマホへの移行期においてまだまだ絶大な力を誇っていました。
当たり前ですがそんな会社達がスマホに乗り込んで来ます。ガラケーで既に人気のタイトルをブラウザでiPhone対応にする事で既存顧客を逃さないようにしつつ、アプリ化を進めます。
またアプリの収益源に変化が訪れました。スマホ向け広告の本格登場です。
いまでは当たり前ですが、無料アプリに広告を入れて収入を得るスタイルが安定し個人開発者は無料アプリでも収入が得られる事になりました。
これにより有料アプリの大手、ライト無料ゲームの個人、ゲーム内課金のソーシャルゲームという3極の時代にはいります。
しかし転機が訪れました。
あのアプリの登場です。そう、いまやゲームという括りでも知らない人はいない「パズル&ドラゴンズ」です。
パズドラの凄さは今さら語る必要は無いのかもしれませんが、有料アプリに負けないハイクオリティな画像、移植ではないオリジナルでスマホに最適化されたパズル、友達と協力出来るソーシャル性、長くプレイ出来るゲームとしての重さ、隙間時間に出来る手軽さ、いやらしくない課金要素、その時点で考えられる全ての良要素が詰まったゲームといって過言ではありませんでした。
これにより、iPhoneゲーム界のバランスはじわじわと崩れ始める事になります。
パズドラの影響は有料・無料アプリともに受けました。有料アプリとしては無料で有料レベルのアプリがあれば買われなくなりますし、同じ無料アプリでもレベルの高いものがあれば人はそちらに流れます。
ゲームシステムでは主にカードソーシャルとつぶす事にもなりました。それまでのソーシャルゲームはシステムはほぼ同じ、カードデッキを組み合わせて、あとはタップだけの簡単クエストをこなすのが基本。
しかしパズドラはそのソーシャルゲームの流れに本格的なパズルを合体。“こなす”ゲームではなくちゃんと”遊ぶ”ゲームを提供した事で同ジャンルのユーザーも攫っていくことになります。
これらの変化を受け、2013年中期に向けカードソーシャルゲームは一気に人気を落とす事になります。そしてそれまで簡単な移植や人気ゲームの簡単な関連アプリで様子を見ていた国内大手ゲームメーカ、いわゆる「ゲーム会社」が本格的に動き出しました。
パズドラ以降、パズドラコピーとも言われる「ゲーム性の高いパズル+カードソーシャル」形式のアプリが多数登場します。いずれもパズドラを抜く事は出来ないでいつつも一定の成果をあげます。
中でもセガはオリジナルの「ドラゴンコインズ」を機に、人気タイトルぷよぷよを使った「ぷよぷよ!!クエスト」とヒットを連発。そしてオリジナルの本格RPGとアクション性のあるタワーディフェンスを組み合わせパズドラとは別アプローチで作り上げた大作「チェインクロニクル」を出すなど最も本気が感じられます。
カプコンも同様に人気タイトルであるモンスターハンターと絡めて「モンハン商店 アイルーでバザール」といったオリジナル関連アプリや「オトレンジャー」といった同社初めての音ゲーなど挑戦的な試みも行っています。
他にはミニゲームを大量にリリースしいずれもヒット、そこから大型タイトルの投入まで至ったコロプラの「クイズRPG 黒猫のウィズ」など旧来のゲーム会社ではないベンダーが力を付けて来ているのも注目です。
またスマホ初期からクオリティの高い有料アプリで成果を上げてきたゲームロフトなど基本無料モデルに移行しているという変化も見逃せません。
まとめると2013年末の段階でアプリ業界の主な状況は以下の様な感じだと思われます。
・大手によるスマホオリジナルタイトルが人気 ・基本は無料、アイテム課金型 ・有料アプリは厳しい ・ゲーム性は高く、パズル+RPGやRPG+ディフェンスなど複合型ゲーム ・広告モデルは継続中だがランキング上位が詰まっているため苦戦中
そして重要なのがここからの未来です。
あくまで私個人の予想ですが、まだまだゲームはリッチ化します。LTE網の整備により通信が高速・安定化する事でオンラインゲームは一つの大きなジャンルとなりそうです。
ただ、オンラインゲームというのはコンシューマでもハードルの高いジャンルの一つ。リッチ化とは逆にライトゲームの復興も期待出来るのではないでしょうか。
今は大手ゲームタイトルの台頭によりボリュームが増えたお陰で、1タイトルにかけるユーザー一人ひとりの時間が増加、奪い合うパイはさらに激化しています。その証拠に大手ゲーム会社の中には今になってスマホから手を引いているところもあります。
またカジュアルゲームがランキング上位に行きづらいという、全体としては少し疲弊感すらあります。
ただ一方でその状況を打開すべく様々な試みも行われています。例えば個人・会社を超えての開発者同士のコラボや、キャラクター版権アプリを個人開発者が受注するなど常に新しい試みも行われています。
正直言ってしまうと先のことは誰もわからないというところですが、それは実は今までもずっとそうでした。今後iPhoneアプリがどうなるのか、ユーザーのみなさんと一緒に遊びながら見守って行きたいと思います。
ライター:イマ&ムラ
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