8月3日(米国時間)、6月にITC(米国際貿易委員会)が下した「iPhone 4に対する輸入販売禁止」の裁定に対して、オバマ大統領が拒否権を発動しました。これにより、米国では引き続きiPhone 4の輸入・販売が自由に行えることになります。
そもそもこの事例はどういうことなのでしょうか?分かりやすく噛み砕いて説明してみたいと思います。
ことの発端は、AppleとSamsungの特許侵害騒動から始まります。
Samsungが保有する「3G通信関連の特許」の一部にiPhone 4がひっかかるとして提訴。それがITCに認められ、輸入および販売の禁止の裁定が下されました。
一方Appleは、「その項目は通信事業に欠く事のできない極めて標準的な技術であり、禁止の裁定は不服だ」と主張。
とはいえITCによる裁定を覆せるのは、唯一拒否権を持つオバマ大統領のみ。そして、その拒否権が今回発動されたこととなります。これにより裁定は完全に無効となりました。
ちなみにこれまで拒否権が発動された事例は1916年以降たったの6件。直近は1987年のレーガン大統領が発動したケースで、26年前となります。
それだけに今回の拒否権は関係者の間に大きな驚きを与えました。
そしてこの拒否権には、様々な意味合いがあるように思えます。
ひとつは、AppleとSamsungの終わる事のない特許侵害騒動に対するアメリカ政府の「いい加減にしなさい」というメッセージ。場合によっては政府も介入するぞという警告の意味が含まれています。
ふたつめは、iPhone以外でも今後起こりえる、「標準機能の特許」を理由にした輸入差し止めを防ぐため。こちらは新制度の導入を示唆する意味合いもあります。
みっつめは、今回の禁止対象となったiPhone 4がAT&T社製のものであり、オバマ氏としては同社の政治資金が無視できない故の救済策だった可能性もあります。
世界中を驚かせた大統領の拒否権発動。その裏には様々な思惑が複雑にからみあってるようです。少なくとも、「政府が米国企業を救った」という単純なものでないことだけは確かでしょう。
⇒ THE WALL STREET JOURNAL
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